宿と小説の読みもの、余白
神奈川県足柄下郡湯河原町(宮上)

石葉

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この宿の記録

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この宿に泊まる一晩を、小説にしてある。

油性ペンのインクが布に滲んで、母の名前が少し太る。

美咲『軽い鞄が、いちばん重い』

母を施設に預けて、二日続きの休みを取るのは初めてだった。乗り換えのない九十五分の電車で、わたしは紫陽花の雨に烟る湯河原へ向かう。誰にも呼ばれない夜に、鳴らない携帯を見つめながら、何を思うか。

「部屋、二つ取ったから」と娘が言った。理由は聞かなかった。

修一『部屋を、二つ』

娘から、部屋を二つ取ったと連絡があった。理由は聞かなかった。神奈川・湯河原、各室に自家源泉の浴槽がある宿で、娘と部屋を分けて一泊する。

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向かないとき

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