宿の選び方
便の本数で決まる。週に三往復しかない宿なら、その三往復のどれかに日を合わせる。
見るもの
- 始発と終発
- 広間へ下りずに済むか
- 若い人の疲れた顔
小説からの引用
「その下に、名前はまだ一つも無い。」
定年のあと、一人で旅をしている。記録は万年筆で、誰にも読ませない速さで付ける。急がない。並ばない。名所を名所として見ない。終わりのある仕事は、毎日新しく終われた。
年金と貯えを数え、あと何回こういう旅ができるかを思い、数えるのをやめた。終わりがあることは、豊かさでもある。若い人の疲れた顔をよく見ているが、声はかけない。
はじめに読む一篇
年譜
12 話- 連載のなかの時間
- 2026年7月 — 2029年8月(37か月)
- 泊まった回
- 12 回
- あいだ
- 平均 3.4 か月
- № 008 2026年7月 初出 一日ぶんだけ書いて、閉じる 日光金谷ホテル — 栃木県日光市 二万円台半ば〜(1名1室・夕朝食付) 「朝とはこんなに長いものだったのかと、五年経ったいまでも思う。」
- № 018 2026年9月 前の回から 2 か月 本館は、坂の下にある 大和屋別荘 — 愛媛県松山市 五万円台前半〜(1名1室・夕朝食付) 「本館へは、結局行かなかった。惜しいとは、思わなかった。」
- № 029 2026年11月 前の回から 2 か月 週に三往復の便 あかん鶴雅別荘 鄙の座 — 北海道釧路市 九万円台半ば〜(1名1室・夕朝食付) 「週に三往復。その三往復に、私は間に合った。」
- № 047 2027年4月 前の回から 5 か月 紅型を一枚、頼まれた 海の旅亭おきなわ名嘉真荘 — 沖縄県国頭郡恩納村 五万円台前半〜(1名1室・夕朝食付) 「袋は鞄に入れず、膝の上に置いた。搭乗の列が動きはじめるまで、そのまま持っていた。」
- № 059 2027年9月 前の回から 5 か月 従わない、では入れない ホテル松葉川温泉 — 高知県高岡郡四万十町 一万円台半ば〜(1名1室・夕朝食付) 「朝、九時を少し過ぎてから、湯へ行った。閉まっていた。」
- № 066 2027年11月 前の回から 2 か月 一本の時刻表 時音の宿 湯主一條 — 宮城県白石市 三万円台後半〜(1名1室・夕朝食付) 「一本しかない時刻表は、読むものではなく、覚えるものだった。」
- № 117 2027年12月 前の回から 1 か月 一部屋 下部ホテル — 山梨県南巨摩郡身延町 一万円台後半〜(1名1室・条件不明) 「鞄の中を探して、無いのを思い出した。娘のところにある。それでも、もう一度探した。」
- № 123 2028年3月 前の回から 3 か月 おまかせ 奥道後 壱湯の守 — 愛媛県松山市 一万円台後半〜(1名1室・条件不明) 「その下に、名前はまだ一つも無い。」
- № 076 2028年10月 前の回から 7 か月 部屋を、二つ 石葉 — 神奈川県湯河原町 十万円台前半〜(1名1室・夕朝食付) 「「部屋、二つ取ったから」と娘が言った。理由は聞かなかった。」
- № 077 2028年12月 前の回から 2 か月 長い一手 高志の宿 高島屋 — 新潟県新潟市 二万円台半ば〜(2名1室の1名分・夕朝食付) 「急いで指す将棋は無いのだと、宿の人が言った。」
- № 078 2029年6月 前の回から 6 か月 予定を立てない 旅館花屋 — 長野県上田市 二万円台前半〜(2名1室の1名分・夕朝食付) 「痕を見て、娘が、痛かった、と聞いた。」
- № 107 2029年8月 前の回から 2 か月 空いた頁 大歩危温泉 サンリバー大歩危 — 徳島県三好市 一万円台前半〜(1名1室・夕朝食付) 「薄くなった頁を繰るのをやめて、まだ一度も繰っていない頁を探した。」
宿の取り方
12 泊ぶん- 額の帯記録を書いた時点
- 一万円台前半 〜 十万円台前半 多いのは 一万円台(4 回)
- 土地
- 11 県 二度以上 — 愛媛県(2)
- 一人で
- 12 回のうち 8 回
承知のうえで取った宿が、持っていたもの。
- 湯の時間が決まっている — 大和屋別荘、あかん鶴雅別荘 鄙の座、海の旅亭おきなわ名嘉真荘、ホテル松葉川温泉、石葉、高志の宿 高島屋、旅館花屋
- 加水または加温がある — 大和屋別荘、あかん鶴雅別荘 鄙の座、時音の宿 湯主一條、石葉、高志の宿 高島屋、旅館花屋
- アメニティを置いていない — ホテル松葉川温泉、時音の宿 湯主一條、高志の宿 高島屋、旅館花屋
- 男女入れ替え制 — あかん鶴雅別荘 鄙の座、ホテル松葉川温泉、旅館花屋
- 送迎が予約制 — ホテル松葉川温泉、時音の宿 湯主一條
- 露天風呂がない — 日光金谷ホテル、海の旅亭おきなわ名嘉真荘
- かけ流しではない — あかん鶴雅別荘 鄙の座
- 送迎の便が決まっている — 時音の宿 湯主一條
別の順で読む
4 通り土地で選ぶ11
同じ県に二度行っていることがある
状態で選ぶ3
夜話が、この人の記録をどの晩に置いたか
すれ違い
3 箇所小説のなかで、この宿を選んだときの一言 「明治からの木造である。泊まりだけを頼むプランがあった。朝、パンを焼くところが館の中にある。私はそれだけ見て決めた。」