宿の選び方
帰れる距離かどうか。着信が入ったとき何時間で戻れるかを、湯のことより先に調べる。
見るもの
- 帰りの最終の便
- 携帯の電波
- 時計
小説からの引用
「預けた日の数だけ、私も泊まっている。それは、引き算ではない。」
母を預けて出かけられるのは、一泊二日が限界だ。預けること自体に、うまく名前を付けられていない。自分が疲れている、と口に出す言い方を、長いあいだ持っていない。
預けるたびに罪悪感が来て、そのほうが母のためにもいいと言い聞かせ、それでも鞄に重さが残る。休みを罪悪感の言葉ではなく、予定として手帳に書くことを、覚えようとしている。
はじめに読む一篇
年譜
10 話- 連載のなかの時間
- 2026年6月 — 2028年9月(27か月)
- 泊まった回
- 10 回
- あいだ
- 平均 3 か月
- № 005 2026年6月 初出 軽い鞄が、いちばん重い 石葉 — 神奈川県湯河原町 十万円台前半〜(1名1室・夕朝食付) 「油性ペンのインクが布に滲んで、母の名前が少し太る。」
- № 015 2026年8月 前の回から 2 か月 送迎という同じ言葉 花巻温泉 佳松園 — 岩手県花巻市 二万円台後半〜(1名1室・夕朝食付) 「同じ言葉なのに、片方は母を連れていき、片方は私を連れていく。」
- № 026 2026年11月 前の回から 3 か月 二種類の湯、一泊の体 鳥越の宿 三楽園 — 富山県砺波市 二万円台後半〜(1名1室・夕朝食付) 「呼ばれなくなって、最初の二週間は、耳が呼ばれるのを待っていた。」
- № 044 2027年3月 前の回から 4 か月 予定ではなく、名前で書く 大正屋 椎葉山荘 — 佐賀県嬉野市 「代わりに、自分の名前だけを書いた。美咲、とだけ。」
- № 056 2027年8月 前の回から 5 か月 名前の下に、一行 湯の澤鉱泉 — 茨城県常陸大宮市 一万円台後半〜(1名1室・夕朝食付) 「湯に入って、手の甲がしみた。三年ぶんの消毒が、まだそこにある。」
- № 064 2027年10月 前の回から 2 か月 呼ばれない一晩 ゆめみの宿 観松館 — 山形県最上郡最上町 一万円台前半〜(1名1室・夕朝食付) 「同じ会席だった。会場で食べるか、部屋へ運んでもらうか。それだけで、四千円ほど違った。」
- № 100 2028年1月 前の回から 3 か月 二年 塩原温泉 湯守田中屋 — 栃木県那須塩原市 二万円台前半〜(1名1室・条件不明) 「二年後に自分がどこにいるかを、私はもう考えない。考えないことにしたのではなく、考える癖がなくなった。」
- № 125 2028年4月 前の回から 3 か月 少量 伊香保温泉 福一 — 群馬県渋川市 一万円台半ば〜(1名1室・条件不明) 「食べきれない、を先に見込んで選んだのは、初めてだった。」
- № 106 2028年6月 前の回から 2 か月 河口 四万十の宿 — 高知県四万十市 三万円台前半〜(1名1室・夕朝食付) 「全部食べたのは、いつ以来か分からない。分からないまま、食べ終えた。」
- № 128 2028年9月 前の回から 3 か月 狭いほうが、高い 谷地温泉 — 青森県十和田市 二万円台半ば〜(1名1室・夕朝食付) 「携帯は圏外のままで、時刻だけが動いていた。」
宿の取り方
10 泊ぶん- 額の帯記録を書いた時点
- 一万円台前半 〜 十万円台前半 多いのは 二万円台(5 回)
- 土地
- 10 県
- 一人で
- 10 回とも
承知のうえで取った宿が、持っていたもの。
- 加水または加温がある — 石葉、花巻温泉 佳松園、鳥越の宿 三楽園、大正屋 椎葉山荘、湯の澤鉱泉
- 送迎が予約制 — 湯の澤鉱泉、ゆめみの宿 観松館、塩原温泉 湯守田中屋、谷地温泉
- 湯の時間が決まっている — 石葉、花巻温泉 佳松園、鳥越の宿 三楽園、大正屋 椎葉山荘
- 男女入れ替え制 — 花巻温泉 佳松園、湯の澤鉱泉、谷地温泉
- アメニティを置いていない — 鳥越の宿 三楽園、湯の澤鉱泉
- かけ流しではない — 花巻温泉 佳松園、大正屋 椎葉山荘
- 客室にトイレがない — 湯の澤鉱泉、谷地温泉
- 送迎の便が決まっている — ゆめみの宿 観松館、谷地温泉
- 電波が弱い — 湯の澤鉱泉、谷地温泉
- 露天風呂がない — 湯の澤鉱泉、谷地温泉
- 客室に風呂がない — 谷地温泉
- 現地でカードが使えない — 湯の澤鉱泉