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河口
次の面会まで、間隔が空いた週だった。空いたので、旅を入れた。
高知まで、飛行機で行った。空港からは高速で、川沿いに南下する。窓の外に、川がだんだん広くなっていくのが見えた。海に出る手前で、いちばん広い。
宿は、その広くなったところの丘の上にあった。
予約の画面で、プランを五つ見た。
いちばん軽いものへ、手が伸びかけた。母の用紙と同じ考え方だと、途中で気づいた。——食べきれない前提で、先に量を決める。
今回は、伸ばさなかった。四万十牛の会席を選んだ。
一室
取れた部屋は、洋室が一つだった。ほかは、満室だった。
露天風呂付きの部屋もあると、予約の画面には出ていた。今回は選べなかった。選べなかったことに、特に何も思わなかった。

大浴場は、海水を使った露天風呂があった。塩の匂いがした。海の匂いとは、少し違う気がした。違う理由は分からなかった。
湯上がりに、携帯を見た。職場からの連絡はなかった。施設からの連絡もなかった。
会席
夕食は、個室ではなく食事処だった。
奥の席に、男が座っていた。皿に箸をつける前に、写真を一枚だけ撮っていた。撮ってから、箸を取った。撮る枚数を選ぶのに、迷いはないようだった。

四万十牛は、思っていたより量があった。食べながら、何割食べたかを数えかけて——数えなかった。数えなかったこと自体、途中までは気づかなかった。
塩タタキも、小鉢も、汁も、全部食べた。
全部食べたのは、いつ以来か分からない。分からないまま、食べ終えた。
丘の上
食後、部屋に戻った。携帯を見ずに、しばらく座っていた。
母の用紙は、今週はまだ見ていない。見ていないことに、部屋に戻ってから気づいた。
見なくても、今日はもう遅い。見るのは、明日でいい。
——明日でいい、と決めるのに、理由はいらなかった。理由がいらないことに、少し驚いた。
丘の下で、川が海に変わっている。変わり目がどこかは、暗くて分からなかった。
