宿と小説の読みもの、余白

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「電車のなかで、親のことを考えている。」

夜話

親のことを考えた帰り道に

帰りの電車で鞄の中身をもう一度たどってしまう、そういう日に読む話を並べています。

並んでいるのは、実在の宿を舞台にした連載小説です。語り手は実在しません。

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帰りの電車で、鞄の中身をもう一度たどる。薬の袋の日数、持たせた着替え、来月の受け取りの日。一晩だけ遠くへ出て、鞄の中身を数えない朝を迎えてみませんか。ここに並べたのは、親のことを持ったまま、一泊ぶんの時間を使った七つの話です。

持たせる物のひとつずつに、名前を書いてから出る
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美咲介護と仕事を両立する会社員

介護と仕事を両立している美咲は、預ける物のひとつずつに名前を書いてから出かけます。続けて休みを取るのは、この職場に来て初めてでした。その晩は、椀の蓋を取って、味噌汁を熱いまま飲みます。

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理由の書いていないところまで、二度読んでしまう
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有希会社員

たどる中身が、紙のこともあります。会社員の有希の机には、実家の片付けから出てきた菓子の缶があります。中の切り抜きのどれにも、印はありません。着いた晩は、廊下に貼ってある紙を、理由の書いていないところまで二度読みます。

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決めなくてよくなっても、時刻を並べてしまう
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大輔元スタートアップ経営者

決める側に戻ったあとの話もあります。元スタートアップ経営者の大輔の家では、去年まで、予定という予定を介護の都合で決めていました。何も決めずに泊まろうと言われて、送迎の時刻を並べた表を作りかけている自分に気づきます。

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用のない電話をすぐに切って、置いた手が動かない
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克彦早期退職した元管理職

誘う側に回った人もいます。早期退職した元管理職の克彦は、用のない電話をすぐに切って、受話器を置いた手をしばらく机に載せたままにしました。泊まった晩は、手招きをされて、外で川の音を一緒に聞きます。

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ほかに、美咲の別の晩が三つあります。どれも同じ人の、少しあとの日です。持たせる側でいることをやめない人が、自分のための一泊をもう一度取る話が並びます。

『予定ではなく、名前で書く』美咲 『呼ばれない一晩』美咲 『少量』美咲

今夜の一話

美咲 — 介護と仕事を両立する会社員 軽い鞄が、いちばん重い 母を送り出したあと、美咲は乗り換えのない電車に乗って、雨の宿へ向かう。誰にも呼ばれない一晩を、自分のために取った日である。 呼ばれない一晩がどんな時間になるかを、荷造りのほうから書いていて、前の話を読んでいなくても分かります。
油性ペンのインクが布に滲んで、母の名前が少し太る。
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舞台になった宿

『軽い鞄が、いちばん重い』の舞台は、石葉。

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そのほかの話

事情をひと言も説明したくない晩は、『誰にも説明したくない日に』へ続けて読めます。

今夜の話の語り手 美咲有希克彦大輔

この状態に、ひとつ

膳がどこに出るかで並べてあるので、席が並ぶかどうかを、宿ごとに見比べられます。

『一人でも、他の客と席が並ばない宿』
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