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RECORD № 047

紅型を一枚、頼まれた

終わりのある仕事の豊かさ。毎日新しく終わること

定年後、一人で旅をしている先達。旅の記録は万年筆で、誰にも読ませない速度で付けている。急がない。並ばない。名所を名所として見ない。黒瀬がいずれ辿り着くかもしれない場所を、先に歩いている人。

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付箋

時刻表の北海道の頁に、付箋を挟んだままにしていた。五か月、そのままだった。今日、その付箋を沖縄の頁に移した。理由は、特にない。強いて言えば、隣の頁だったからだ。

「今度はどこ」と妻が聞いた。聞かれること自体が、珍しかった。「沖縄」と答えると、少し間があって、「紅型の柄のものを、何か一つ」と言われた。頼まれたのは、これが初めてだった。今まで、何も頼まれたことがなかった。

飛行機は、私一人で乗る。膝の悪い妻は、今回も控えると言った。控えたい、というのが本当の理由かどうかは、聞いていない。

空路

羽田から那覇まで、二時間四十五分。空の上では、することがあまりない。時刻表を出して、沖縄の頁を眺めた。従うつもりのない時刻表を、ただ眺める時間が、私は嫌いではない。

画像はイメージです

那覇空港からは、レンタカーで九十分だという。高速を降りると、道の両側にさとうきび畑が続いた。本州の畑とは、緑の色が違って見えた。

名嘉真荘

宿に着くと、案内された部屋に半露天風呂があった。海が見えた。名所として見るつもりはなかったが、見えてしまうものは仕方がない。

画像はイメージです

ロビーで、旅の途中らしい男を見かけた。若く、疲れた顔をしていた。声はかけなかった。かけたところで、何を言えばいいのか分からない。手には手帳があった。何かを書きつけているようだった。

夕食は、朝食付きのプランにした。会席の夕朝食付きは、少し値が張った。年金と貯えを、頭の中でまた計算しかけて、やめた。数えるのをやめる、というのが、この歳になってようやく身についた技術だった。

和朝食

朝、和朝食が出た。品数は多くなかったが、丁寧な仕事だった。妻がいたら、写真を撮ったかもしれない。私は撮らなかった。

食事の後、売店で紅型の柄の小物入れを見た。何色がいいか、妻に電話で聞こうかと思ったが、やめた。自分で選んで、それが違ったら、また来ればいい。また来る、という言い方が、自分でも少し意外だった。

紅型

那覇空港で、搭乗まで一時間あった。売店で、紅型の柄の小物入れを一つ選んだ。妻に頼まれたのは、これが初めてだった。頼まれる、というのが、いつからか、こんなに珍しいことになっていた。

時刻表を出して、次の頁を見た。次に行くとは決めていない。決めるのは、今日でなくていい。ただ、小物入れを買ったことだけは、今日決めたことだった。

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Field Notes

海の旅亭おきなわ名嘉真荘

Overview

沖縄県
Region
沖縄県国頭郡恩納村(字名嘉真)
Access
那覇空港から沖縄自動車道 屋嘉IC経由で車(レンタカーまたはタクシー)で約90分
Price
高価格帯(朝食付1名税込42,210円〜。夕朝食付プランは1名税込52,900円〜)

Facility

Room
全25室(スイートルーム95㎡×1室/モダンルーム68㎡×3室/オーシャンスイート44㎡×21室)。全室半露天風呂付き、定員1〜3名
Meal
夕食は沖縄県産和牛と沖縄×北海道食材の和風会席(食事処「海の坊」)。朝食は和朝食。朝食付・夕朝食付の2プラン

宿タイプ

  • 和風旅館
  • オーシャンフロント
  • 露天風呂付き客室

向いている人間

  • 和風旅館の会席料理や朝食をゆったり味わいたい人
  • 沖縄本島北部の海を望む、落ち着いた一軒旅館で過ごしたい一人旅の大人
  • レンタカーでの移動を苦にしない人

向いていない人間

  • 天然温泉にこだわりたい人(温泉の表記は確認できず)
  • 公共交通機関のみで移動したい人
  • 夕食の会席込みで予算を抑えたい人(夕朝食付は1名52,900円〜)

予約前の注意事項

夕朝食付プランは1名52,900円〜と高額になるため、予算内で泊まるなら朝食付プラン(1名42,210円〜)を選ぶ必要がある。那覇空港からは車で約90分かかり、公共交通は実質レンタカーかタクシーが前提になる。温泉(源泉)であるかどうかは未確認。