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RECORD № 048

赤を入れたい文章

仕事を機械に明け渡したあと、何が自分に残るか

長く雑誌の編集をしていたが、その仕事の大半がAIに置き換わった。いまはフリーの校正者として、ゲラの角を撫でて直す癖だけを連れて働いている。「編集者だった自分」との距離を、彼女はまだ測りかねている。

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赤字

十津川の宿から帰って、五か月が経った。指摘の欄に書く手は、まだ速くなり続けている。

先週、新しい発注元から依頼があった。ただし条件がついていた。まず生成AIの校正結果を確認し、そこに追記する形で仕事をしてほしい、という。追記、という言葉を、しばらく見ていた。追記は校正ではない。校正は、原稿そのものと向き合う仕事だ。分かっていたが、単価は悪くなかった。

受けた。受けてから、ゲラの角を撫でる回数が増えた。単価交渉は、今回もしなかった。

フェリーでしか渡れない島に、温泉宿があるという記事を見た。橋がかかっていない、という一文に、なぜか目が止まった。

竹原

新幹線、在来線、また乗り換え。竹原駅で降り、港まで歩いた。十八分。歩きながら、道の看板の書体の不揃いが目に入った。統一されていない字体が、かえって読みやすいということがある。均一でないものには、値段のつけ方がない。

フェリーに乗った。二十五分。海は凪いでいた。乗客は少なかった。

画像はイメージです

清風館

垂水港から、送迎車で十六分。島の温泉宿は、五十四室あるという(一休.comの表記では五十五室で、数字が一致していなかった。誤植を見つけたときと同じ感覚が、少しだけあった)。

ロビーで、封筒を折っている男を見かけた。折り目の角が、少しだけずれていた。几帳面に見えて、几帳面ではない折り方だった。誰かに見せる封筒ではないのかもしれない。手には手帳があった。

会席

夕食は個室で出た。品書きの文字に、小さな誤植を見つけた。「筍」の字が「笋」になっていた。指摘する立場ではない。指摘しないまま、箸をつけた。

画像はイメージです

追記の仕事のことを、また考えた。原稿そのものと向き合う仕事と、誰かの生成物に追記する仕事は、同じ「校正」という名前で呼ばれてしまう。名前が同じだと、違いが消えていく。消えていくことに、まだ慣れていない。

選び方

朝、もう一度温泉に入った。湯の色は、夜と変わらなかった。

垂水港へ送迎車で戻り、フェリー、在来線、新幹線と乗り継いで、東京へ戻った。

車内で、受けるかどうか迷っていた別の一件のことを考えた。単価は、今回のものより低い。ただ、赤を入れたい文章だった。単価ではなく、それで選んでみることにした。決めた、というだけで、まだ返信は送っていない。

均一でないものには、値段のつけ方がない。値段のつけ方がないものを、今日は一つ選んだ。

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PR 宿を予約する きのえ温泉 ホテル清風館 別の小説 新緑に、赤字は入れない
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Field Notes

きのえ温泉 ホテル清風館

Overview

広島県
Region
広島県豊田郡大崎上島町(大崎上島・芸予諸島)
Access
竹原駅から徒歩約18分の竹原港から山陽商船フェリーで大崎上島・垂水港まで約25分、垂水港からホテル送迎車(要事前予約)で約16分
Price
中価格帯(1泊2食1名19,698円〜27,490円。1泊朝食のみ1名13,476円〜23,716円)

Facility

Room
洋室ツイン(定員1〜2名)・和室12畳(定員1〜6名)ほか計5タイプ。総客室数は公式54室・一休.com55室(表記に差異あり)
Meal
会席料理。プランにより夕食は個室食または大広間食(要確認)。朝食はバイキング形式との宿泊者レビューあり(公式未明記)

宿タイプ

  • 温泉旅館
  • 島嶼部の宿
  • 部屋食ではない食事処

向いている人間

  • フェリー乗り継ぎを含む移動そのものを苦にしない人
  • 一人で静かに温泉と食事に集中したい人

向いていない人間

  • 駅直結・徒歩数分の利便性を求める人
  • 到着・出発時刻の自由度を求める人(フェリー最終便・送迎の時間指定あり)

予約前の注意事項

垂水港からの送迎は事前予約制かつ時間指定あり。フェリーの便数・最終便時刻は季節により変動するため要確認。客室総数の公式(54室)と一休.com(55室)の表記に差異あり。