宿と小説の読みもの、余白
RECORD № 088

誕生日の日付

成果の物差しを失った人間は、何を「大漁」と呼べばいいのか

数字で組織を率いて、定年より早く退いた。成果の物差しを返したあとの時間が、まだ身体に馴染まない。妻と話していると、報告の口調が出る。出てから気づく。

克彦という語り手について →

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誕生日の日付

母の誕生日は、去年から手帳に書くようになった。忘れないためではない、忘れそうになったからである。今年は、書いた日付の隣に、宿の名前も書いた。

離れの写真は、検索の途中で何度も出てきた。露天風呂付きの古民家だという。魅力は分かったが、母の足で棟から棟へ移動する距離が増えるのを、避けたかった。本館の和室にした。

行けば分かります

段差がどれだけあるか、電話で聞いた。行けば分かります、と言われた。数で返ってくると思って聞いた私のほうが、報告書の癖から出ていなかった。

諫早駅から島鉄バスで五十分、公立小浜病院前で降りた。運転手は、降りる客の順番を、乗った駅で覚えていたらしい。母の番になると、先にドアの位置を寄せていた。

画像はイメージです

宿までは徒歩三分だった。玄関で靴を脱ぐとき、仲居が母の靴の向きを、聞かずに直していた。玄関脇の待合の椅子で、客が一人、地図を広げて座っていた。広げたまま、しばらく動かなかった。

旬の会席

夕食は部屋に運ばれた。地元の魚介と島原半島の野菜だという。皿が運ばれる順番は、母より先に私のほうに置かれた。理由を聞くと、いつもそうしています、と仲居が答えた。

画像はイメージです

母は、誕生日に何かを望むということが、もう何年もないと言った。望まないことにしたのか、望むものがなくなったのか、私は聞かなかった。

先に伝票を取る

朝、会計のとき、母が財布を出そうとした。今年は先に、私が伝票を取った。母は、あら、とだけ言って、財布をしまった。

次の誕生日をどこにするかは、まだ決めていない。決めていない、と手帳に書いたら、それも予定になった。

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Field Notes

旅館 國崎

Overview

Region
長崎県雲仙市小浜町
Access
諫早駅から島鉄バスで小浜(公立小浜病院前)まで約50分、バス停から徒歩約3分。西九州新幹線かもめで諫早駅、または長崎空港から空港連絡バスで諫早駅
Price
予約サイトで確かめた一万円台後半〜(2名1室の1名分・夕朝食付) 公開の情報から中価格帯(じゃらんの「旬の会席プラン」、大人2名1室で1名あたり税込一万円台後半〜。本館 和室7.5〜8畳・広縁付き)

Facility

Room
本館 和室7.5〜8畳・広縁付き(ウォシュレット完備)。離れ「やまぼうし」(露天風呂付き古民家)は今回不使用
Meal
夕食は部屋食が基本、地元魚介・島原半島の野菜を使った会席料理。朝食は本館1階の半個室等で提供

宿タイプ

  • 温泉旅館
  • 一軒宿
  • 日本秘湯を守る会
  • 全室数の少ない宿

向いている人間

  • 親の誕生日に、少しだけ値の張る宿を選びたい人
  • 貸切風呂のある落ち着いた宿で祝いたい人
  • 本館で完結する動線を望む人

向いていない人間

  • 高齢の同行者がいて、館内の段差や階段の有無を確認せずに予約したくない人
  • 露天風呂付きの離れに泊まりたい人(今回は本館のみ)
  • 駅から徒歩で到達したい人(バス必須)

予約前の注意事項

本館の客室までの経路にある段差や階段、エレベーターの有無は、じゃらん・一休.com・公式サイトのいずれにも記載が見当たらず、確認できなかった。電話で尋ねたが「行けば分かります」という返答で、要領を得なかった。高齢の同行者がいる場合は、予約前に宿へ改めて具体的に問い合わせることを推奨する。離れ「やまぼうし」は本館から独立した棟のため、今回は選ばなかった。料金は変動する。

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