宿と小説の読みもの、余白
RECORD № 090

近況を聞かない

計測をやめられない人間の、漸進的な手放し方

会社を立ち上げて、燃え尽きて、いま手放そうとしている。睡眠も、心拍も、生産性も、十年以上測ってきた。測るのをやめる方法が分からない。少しずつ手を離す以外に、思いつかない。

大輔という語り手について →

本記事はアフィリエイト広告(一休.com・じゃらんnet)を利用しています。

聞かれなかった

妻の実家の集まりがあった。盆でも正月でもない、親戚の誰かの快気祝いだった。僕は、次はどうするのと聞かれる場面を、何度か頭の中で用意していた。用意した答えは、三通りあった。

誰も聞かなかった。

集まりが終わって、駐車場で妻の車を待つあいだ、僕は用意した三通りの答えを、どれも使わなかったことに気づいた。使わなかったことに、少し落胆していた。落胆する資格が自分にあるのか、それも分からなかった。

古民家

翌日、島根の宿を取った。古民家を移築した離れがあるという。妻に見せると、行こう、とだけ言った。理由は聞かれなかった。僕も言わなかった。

出雲空港から車で六分だった。近さに、少し拍子抜けした。もっと遠いところへ行きたかったのかもしれない。遠さと、聞かれなかったことの関係を、考えかけてやめた。

画像はイメージです

五つの貸切風呂

貸切の風呂が五つあると聞いた。一つで足りないのかと思ったが、五つあるということは、待たなくていいということだった。妻と、別々の時間に入った。

湯へ向かう渡り廊下で、客が一人、すれ違った。空いている風呂の札を、指で数えながら歩いていた。

湯から上がって、部屋の前の廊下で妻とすれ違った。すれ違うとき、妻が、快気祝いのお祝い、何にしたんだっけ、と聞いた。品物の名前を、僕はすぐに出せなかった。出せなかったことに、妻は何も言わなかった。

画像はイメージです

すゞ奈

夕食は、移築した別の古民家でとった。梁が黒い。料理は創作和食で、器がひとつずつ違っていた。

「聞かれなかったね」と、妻が言った。今日のことだと分かった。「聞くことがなくなったのか、聞かないほうがいいと思われたのか」

僕は答えなかった。答えを持っていなかった。妻も、それ以上は聞かなかった。

六分

翌朝、送迎の車で空港まで六分だった。妻が、窓の外を見ながら、来年も呼ばれるといいね、と言った。

来年、という言葉の重みを、僕はうまく量れなかった。量ろうとして、やめた。量らなくていいことも、あるのだと思った。思っただけで、口には出さなかった。

この続きに

読み続ける

行き先は、このサイトの中です。

この宿を

予約はこのサイトの外へ、後で送る一通は自分のメールへ届きます。

PR この記録の宿を予約する 湯宿 草菴 予約サイト(一休.com)が新しいタブで開く (外部サイトが新しいタブで開きます)

この頁の場所を、自分のメールへ一通送る

便り

次の話が公開されたとき、一通だけ届きます。

Field Notes

湯宿 草菴

Overview

島根県
Region
島根県出雲市斐川町(湯の川温泉)
Access
JR荘原駅より徒歩約10分。出雲空港から約6分。無料送迎あり(迎え15:00〜18:00 / 送り9:00〜11:00)
Price
予約サイトで確かめた三万円台後半〜(1名1室・夕朝食付) 2名1室での実測二万円台半ば〜(2名1室の1名分・夕朝食付) 公開の情報から高価格帯(夕朝食付2名税込八万円台後半〜。1名あたり四万円台半ば)

Facility

Room
全16室。古民家を再生した離れ客室(天保 / 庄屋 / 明治)、紫雲閣(和洋室)、メゾネット(吉)など
Meal
創作和食会席。築111年の移築古民家を用いたレストラン「すゞ奈」で提供

宿タイプ

  • 温泉旅館
  • 古民家の宿
  • 離れの宿
  • 貸切風呂の宿

向いている人間

  • 家族行事の後、夫婦二人で距離を置きたい人
  • 貸切風呂を使って湯を他の客と共にしたくない人(5か所)
  • 古民家を再生した離れ客室に泊まりたい人

向いていない人間

  • 予算を抑えたい人(夕朝食付2名で88,694円〜)
  • 18時までにチェックインできない人
  • 温泉街の散策を楽しみたい人(温泉街は形成していない)

予約前の注意事項

チェックインは15:00〜18:00、チェックアウトは10:00(一部の部屋は11:00)。無料送迎は迎え15:00〜18:00、送り9:00〜11:00の時間帯に限られる。料金は変動する。

次の話

新しい記録が公開されたときだけ、一通お知らせします。
それ以外のメールは届きません。

メールアドレス以外は受け取りません。配信はいつでも解除できます。 取り扱いはプライバシーポリシーのとおりです。