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加賀と金沢、二つの土地
「加賀」と書いてある酒を、加賀市の酒だと思って買うと外れる。石川県で泊まった宿は、加賀市山代温泉のべにや無何有、金沢市のOnsen & Garden 七菜と金沢・深谷温泉 元湯石屋、二つの土地に分かれている。蔵も加賀に一軒、金沢に一軒ある。ところが加賀の名を持つ銘柄を出しているのは、金沢の蔵のほうである。
加賀の蔵は鹿野酒造
「きげん」は機嫌の字を当てる。酒の名に感情の言葉を選ぶ蔵は多くない。加賀市八日市町の鹿野酒造が、常きげんという銘柄でそれをやっている。瓶を開ける前から、名前がひとこと先に何かを言っている。
家で開けるなら、常きげん 特別純米がある。
PR 常きげん 特別純米 鹿野酒造(石川県加賀市)20歳未満の者の飲酒は法律で禁じられています。
金沢の蔵は福光屋
一つの蔵が、二つの土地の名を持つことがある。金沢市石引の福光屋は、基幹銘柄を福正宗という一方、加賀藩の火消しにちなむ「加賀鳶」という銘柄も造っている。蔵の所在はどちらも金沢市で、加賀市ではない。加賀鳶は加賀藩の江戸屋敷お抱えの大名火消しの名で、公式は歌舞伎の演目からの着想と書いている。加賀という字は、土地ではなく藩の名として付いている。加賀市に泊まった土産に選ぶなら、この一本は外れる。
福光屋という屋号自体も、土地の名から来ている。ただし来ているのは富山県南砺市福光の地名で、金沢の地名ではない。寛永2年(1625年)に石引で始まった酒蔵を、安永年間に越中・福光町から来た塩屋太助が買い取り、享和3年(1803年)頃、七代目が先代の出身地の名をとって「福光屋」を名乗った。買い取った蔵の名に、買い取った側の生まれた土地の名がついている。石川の酒を買ったつもりで、瓶には富山の地名が載っていることになる。
同じ蔵の基幹銘柄は、福正宗 特別純米 銀ラベルという。こちらの名には、加賀も福光も入っていない。
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加賀と金沢の宿
土地が分かれているぶん、宿の記事も土地ごとに分かれて書かれている。べにや無何有は加賀の山代温泉、七菜と元湯石屋は金沢にある。同じ石川県の一泊でも、山代の記事と金沢の記事は、別の土地の話として読める。加賀に泊まった夜に合わせるなら常きげん、金沢に泊まった夜なら福正宗になる。加賀鳶は、名前だけが加賀に寄っていて、どちらの夜とも土地では結びつかない。