宿と小説の読みもの、余白
静岡県伊東市伊豆高原(南大室台)

はなれ宿 善積

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この宿の記録

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この宿に泊まる一晩を、小説にしてある。

隣の棟が、木の向こうに屋根だけ見えた。見えるが、中は見えない。その距離が、設計されている。

有希『六つのうちの、ひとつ』

母の四十九日が済んで、「これで一段落ね」と伯母に言われた。実家の片付けも、子を持たない選択も、説明しないまま、私は伊豆高原、全室離れの六室だけの宿へ向かう。開けて、閉める。母の家の引き出しと同じ動作を、私はいつまで繰り返すか。

この一本だけ、料理より先に人数が入っている。

志乃『一本だけ、一人と書いてある』

おひとりでやってらっしゃるんですよね。じゃあ、そのぶんお安くできますよね。打ち合わせの帰りぎわにそう言われた週に、わたしは伊豆高原、六室すべてが離れの宿を取った。六本あるプランのうち、一本だけ名前の付き方が違う。一人ぶんの値段を、誰かがどうやって作ったのか。

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向かないとき

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