宿と小説の読みもの、余白
RECORD № 083

一緒に入る、最後のほう

誰にも咎められていないのに、自分で自分を採点する声から降りられるか

四歳の息子を育てながら、時短勤務で働いている。夫は平日、単身赴任先にいて週末しか帰らない。子を預けるたび、誰にも咎められていないのに、自分で自分に言い訳をしている。

沙織という語り手について →

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一緒に入れる年齢

保育園の連絡帳に、来月から男女で着替えを分けます、と書いてあった。四歳。分かれる年齢が、少しずつ早くなっている気がする。

夫は単身赴任先にいる。今週は帰ってこない。息子と二人で、どこかへ行こうと思った。大浴場ではなく、部屋に風呂が付いている宿を探した。探しながら、あと何回、一緒に入れるだろうと数えかけて、数えるのをやめた。

シャトルタクシー

空港からタクシーで十五分だった。片道三千円だと聞いて、往復で六千円、何時間ぶんの時給になるか、頭の中で計算しかけた。今日はやめた。やめると決めて、実際にやめられたのは、たぶん初めてだった。

画像はイメージです

離れの棟に、息子が先に走って入った。柱が黒い。息子が、ここ、どうして黒いの、と聞いた。昔の家を運んできたんだって、と答えると、それだけで納得したようだった。

部屋の風呂

部屋に、温泉の風呂が付いていた。息子と二人で入った。息子が、湯船の中で数を数え始めた。十まで数えて、また一から数える。何度目かで飽きて、湯をすくって私の頭にかけてきた。

やめなさい、と言いながら、私は少し笑っていた。この動作も、あと何回見られるだろう、とまた考えかけて、また、やめた。

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地鶏

夕食は部屋に運ばれた。地鶏の料理が出た。息子は半分も食べなかった。残った分を、私が食べた。残さない人だから、と誰にも説明する必要はなかった。

廊下の奥で、宿泊客らしい人が一人、離れの案内板を見ていた。子どもの声がすると、少しだけこちらを見て、また案内板に目を戻した。

何時間ぶんでもなく

寝る前、もう一度、二人で湯に入った。息子はもう眠そうで、数を数えなかった。湯の中で、私にもたれかかってきた。

何時間ぶん、と数えかけて、今日はやめた。時間を、金額でも罪悪感でもなく、ただの時間として過ごした。過ごせた、というだけで、今日は十分だった。

翌朝、息子が、また来る、と言った。私は、そうだね、とだけ答えた。次はいつか、まだ決めていない。

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Field Notes

忘れの里 雅叙苑

Overview

鹿児島県
Region
鹿児島県霧島市牧園町(妙見温泉)
Access
九州自動車道 鹿児島空港溝辺ICより車で約15分。鹿児島空港・隼人駅からは片道3,000円のシャトルタクシーを手配可能
Price
予約サイトで確かめた六万円台後半〜(1名1室・夕朝食付) 2名1室での実測五万円台前半〜(2名1室の1名分・夕朝食付) 公開の情報から高価格帯(夕朝食付2名税込九万円台半ば〜。1名あたり四万円台半ば〜)

Facility

Room
全8室。古民家を移築した離れ家形式。お風呂リビング付き客室、露天風呂付き特別客室など複数タイプ
Meal
夕食・朝食付き。朝食は自家菜園の野菜を使う

宿タイプ

  • 温泉旅館
  • 古民家の宿
  • 離れの宿
  • 貸切風呂の宿
  • 露天風呂付き客室

向いている人間

  • まだ大浴場を使わずに子と入れる年齢のうちに部屋の風呂で過ごしたい人
  • 古民家を移築した離れ家形式の客室に泊まりたい人
  • 客室の温泉風呂で湯を完結させたい人

向いていない人間

  • 予算を抑えたい人(夕朝食付2名で93,782円〜)
  • 公共交通だけで到達したい人(空港・駅からはシャトルタクシーが有料)
  • 18時30分より遅くチェックインしたい人

予約前の注意事項

鹿児島空港・隼人駅からのシャトルタクシーは片道3,000円の有料(無料送迎ではない)。チェックインは14:00〜18:30、チェックアウトは12:00。料金は変動する。

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