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預ける
保育園で知り合った友人から、一泊しないか、と誘われた。子どもは互いの夫に預ける。友人も、平日は一人で回している時間が多いと聞いていた。
誰にも咎められていない。夫も、預けることに何も言わなかった。それでも、行くと決めるまでに三日かかった。
十五時以降
送迎は十五時以降だと聞いていた。私たちは十五時ちょうどの便を選んだ。早く着いても、預けた時間が減るわけではないのに、早く選んだ。

バスが谷を上がっていくあいだ、友人が携帯を三回確認した。私も、同じくらい確認していた。確認して、何も来ていないことに、少しほっとした。ほっとした自分に、少し驚いた。
何時間ぶん
宿は九室だという。夕食は個室に運ばれた。友人が、預けた時間を、あとで計算しちゃう、と言った。私も、と答えた。何時間ぶん、と数え直す癖があると言うと、友人が、それ、わたしもする、と笑った。

廊下の奥から、宿の者ではない男が一人、部屋へ戻っていくところだった。何かを書き終えたところらしく、手の中のものを閉じながら歩いていた。私たちには目もくれず、通り過ぎていった。
貸切風呂
貸切の風呂に、友人と入った。硫黄の匂いがした。友人が、誰にも預けたことないまま三年目、と言った。今日が初めて、と私が答えると、友人が、じゃあ今日から数え始めよう、と言った。
空欄
翌朝、大浴場に一人で入った。誰も呼ばず、誰にも呼ばれない時間だった。空欄、という言葉が浮かんだ。埋めなければならない欄ではなく、空けておいていい欄。
十時に発った。バスの中で、携帯を見た。夫からの連絡は一件だけで、変わりなし、とだけあった。預けた時間を、あとで何時間ぶんと数え直す癖がある。今日、友人も同じことをしていると分かった。分かっただけで、癖はまだ消えていない。消えていないが、一人でしていたときより、少し軽かった。
