宿と小説の読みもの、余白
奈良県吉野郡十津川村平谷(十津川温泉)

静響の宿 山水

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この宿の記録

3篇

この宿に泊まる一晩を、小説にしてある。

その村の名前が五回出てきて、五回とも、著者は「鉄道のない村」と書いていた。

— 楓 | 『線路の引かれていない村』

紀行文の索引をつくる仕事に、赤を入れたい場面がひとつもなかった。日本一面積の広い村に線路が一本もないと知り、私は奈良県十津川村の宿へ向かう。判断のいらない作業をこなす日々の中で、赤を入れたい一頁と、また出会えるか。

預けた時間を、あとで何時間ぶんと数え直す癖がある。今日、友人も同じことをしていると分かった。

— 沙織 | 『空欄にした時間』

保育園で知り合った友人と、子を預けて初めて一泊する。預けた時間を、いつもの癖で数え直そうとしたら、友人も同じことをしていた。奈良・十津川温泉、鉄道の通わない村の宿へ向かう。

人数を言う場面が、この宿には一度もなかった。

— 有希 | 『六件と二百円』

十月の暦は、第二月曜に一つ色がついて、下旬はどこにも色がない。年度内に取らないと消える休みが五日ある、と通知が来た。予約の頁の人数を二名から一名に替えると、八件が六件になった。一人分の額は二百円高くなるだけで、減るのは選べる数のほうだった。

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向かないとき

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