宿と小説の読みもの、余白
埼玉県秩父市(秩父七湯)

秩父七湯「御代の湯」 新木鉱泉旅館

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この宿の記録

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この宿に泊まる一晩を、小説にしてある。

六千三百六十円は、一日ぶんの食費よりは高い。それだけの理由で、僕は素泊まりを押した。

『差額、六千三百六十円』

十月の公募まで、枚数が足りない。素泊まりと二食付きの差額は六千三百六十円で、僕はその差額を、書ける時間に換算した。文政十年から残るという八畳間で、僕は本当に書けるのか。埼玉・秩父の山あいの宿へ、日払いの給料を握って向かう。

「特に用は無いけど」と言った。前置きだった。前置きなのに、それで全部だった。

有希『特に用は無い』

兄から、また電話が来た。「特に用は無いけど」とだけ言った。有馬から二か月、理由の無い誘いを兄は続けるつもりらしい。今回は近さだけを理由に、埼玉・秩父の宿へ二人で向かう。

予定を詰めない練習を、僕らはまだしていない。していないことに、今日、気づいただけである。

大輔『介護が終わったこと』

妻の親の介護が去年終わってから、予定を詰めずに過ごせるはずだった。それでも、行程表を作りかけている自分に気づいた。埼玉・秩父、山あいの宿へ、何も決めない一泊に向かう。

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向かないとき

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