宿と小説の読みもの、余白
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露天風呂付き客室のある宿を選べば、その部屋になる、と思っていた。

その思い込みの中身から、話を始めます。露天風呂付き客室のある宿、という言葉で探す。良さそうな一軒が出てくる。部屋で湯に入れて、しかも良い湯だろうと、二つのことを一度に手に入れたつもりになる。

手に入るのは、一つです。

湯の付く部屋が、何室あるか書かれている

案内は、数字が出ている側からです。総室数と、そのうち何室に湯が付くかが数字で出ていて、枠の少なさが先に分かります。高志の宿 高島屋は全18室のうち露天風呂付客室が5室、秘境 白川源泉 山荘 竹ふえは全12室のうち8室が露天風呂付離れ和室で、残る4室は本館和室です。

部屋を選んで決まるのは、湯が有るか無いかまでです。その湯が何であるかは、宿の側で決まっています。秩父七湯「御代の湯」 新木鉱泉旅館の湯は循環ろ過で、約15℃の単純硫黄冷鉱泉を加温して使っており、露天の付く12畳を取っても、8畳を取っても、そこは動きません。

しかも、湯の付く部屋は多くありません。登録有形文化財の宿 名泉鍵湯 奥津荘は全8室のうち2室で、宿の名前だけで予約すれば、残る六室のほうに入ります。

部屋から湯を取ると決めると、予約の前に決まるのは一つだけです。その晩、戸を引いて自分の湯に入れるかどうかであって、その湯が何度の、どういう成分の湯であるかは、部屋の名前を変えても動きません。価格帯を上げれば部屋は広くなりますが、注がれている湯は宿の湯のままです。決まることと決まらないことは、ここで分かれています。

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分けたのは、湯の付く部屋がどこまで分かるかです。予約ページにある数字と部屋の名前のほかに、手がかりがありません。

湯の付く部屋の、名前が書かれている

数字の次は、名前です。室数までは出ていませんが、部屋タイプに名前があるので、その名前で指定できます。新木鉱泉旅館の三タイプのうち露天が付くのは12畳の一つ、旅館國崎で露天が付くのは本館ではなく離れ「やまぼうし」という古民家の棟です。

「あり」とだけ書かれている

名前も出ていない側が、最後に残ります。湯の付く部屋があることは分かります。何室かも、どの部屋かも書かれていません。

向かないとき

部屋タイプを指定しないと、湯は付きません。これは八軒すべてに当てはまり、宿の名前だけで日付と人数を入れて送ってしまうと、着いて渡される鍵の先にあるのは、湯の付かない部屋のほうです。

「露天風呂付き客室」と「温泉」は、別のことです。 この八軒のうち七軒は客室の湯が温泉ですが、鳥越の宿 三楽園の半露天風呂付客室2室だけは、公式サイトの客室ページに「客室の半露天風呂は温泉ではありません」と書いてあります(2026-09-05)。温泉であることと、そのまま流れていることも、また別に決まります。金沢・深谷温泉 元湯石屋の案内には、かけ流しではないと書いてあります。その湯は加温です。高志の宿 高島屋の露天には加温と加水があり、部屋の湯船の縁に肘を置いて浸かるとき、そこに注がれているのは、その宿が持っている湯のほうです。

金沢・深谷温泉 元湯石屋は、露天風呂付客室が「あり」としか書かれておらず、何室あるかは確認できていません。分からないものは、分からないと書きます。

旅館國崎の離れ「やまぼうし」を使う会席プランは2名以上限定で、一人では取れません。

秘境 白川源泉 山荘 竹ふえは、湯の付かない部屋のほうが少なく、12室のうち8室が露天風呂付離れ和室です。それでも本館和室4室を取れば湯は付かないので、決めているのは割合ではなく、予約の画面で選んだ部屋の名前のほうです。

料金も部屋の構成も変わります。ここに並ぶのは掲載ページと調査記録に書かれていたもので、現地で違っていることはあります。

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選ばずに済む宿もあります。どの部屋にも湯がある宿ならどの部屋にも、湯がある宿、部屋ではなく時間で借りるなら湯を、借り切って使う宿があります。

譲るほうを、決める

二室という数は、宿の側の数です。

その二室が行きたい日に空いているかどうかは、こちらでは決められません。先に日付を決める人は部屋のほうを譲り、先に部屋を決める人は日付のほうを譲ることになります。

どちらを譲ったかは、泊まってしまえば残りません。残るのは、湯を張った縁に手を掛けて、まだ濡れている木から立つ匂いを吸い込んだ、その一度だけです。

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