宿の選び方
人数、間隔、順番、値段、所要時間で見る。ただし、それで決めたことは一度もない。
見るもの
- 母数と外れ値
- 人の口の動き
- 手元の残高
小説からの引用
「分類できないものだけが、手帳に残っている。」
三十四歳。港区白金台に一人で住む。データ分析の会社を経営し、あらゆる対象を変数とパターンに置き換えて生きてきた。旅館だけは、事業にしないと決めている。出張の合間に行き先を毎回変えながら宿を巡り、そこですれ違った人々の話を、この場所に集めている。
六人の会社を経営している。決められない企業のために、決めるための根拠を作って売る。決めているのは客で、彼ではない。その空白を、次の受注で埋めている。手元の残高は毎朝見る。見ない日はない。
はじめに読む一篇
年譜
4 話- № 020 非構造化データ、十一語目 亀の井別荘 — 大分県由布市 八万円台半ば〜(1名1室・夕朝食付) 「分類できないものを、私は十一個持っている。」
- № 030 三十のうち、六つ 秘境 白川源泉 山荘 竹ふえ — 熊本県南小国町 九万円台前半〜(2名1室の1名分・夕朝食付) 「門を入ると、竹だった。竹林の中に、道が通っている。両側から竹が寄っていて、上のほうで交差している。」
- № 040 フォルダ名を消した日 忘れの里 雅叙苑 — 鹿児島県霧島市 六万円台後半〜(1名1室・夕朝食付) 「分類できないものを、私は分類できないまま持っていた。」
- № 053 数えなかった、十四語目 山荘 天の里 — 和歌山県伊都郡かつらぎ町 七万円台半ば〜(1名1室・夕朝食付) 「貸切の風呂に入った。部屋の風呂は温泉ではないと、案内に明記されていた。」
宿の取り方
4 泊ぶん- 額の帯記録を書いた時点
- 六万円台後半 〜 八万円台半ば
- 土地
- 4 県
- 一人で
- 4 回とも
承知のうえで取った宿が、持っていたもの。
- 男女入れ替え制 — 亀の井別荘、忘れの里 雅叙苑
- 露天風呂がない — 忘れの里 雅叙苑、山荘 天の里
- かけ流しではない — 山荘 天の里
- 加水または加温がある — 山荘 天の里
別の順で読む
2 通り編者名義の厳選録
4 本同じ宿に泊まった、ほかの語り手
4 人名前を出さずに、通り過ぎてきた土地
46 都道府県
黒瀬は、どの話のどこかにいる。多くは名前では出てこない。
これは彼自身の記録ではなく、連載がこれまでに記録した46の都道府県である。
色が濃いほど、その土地で記録された話が多い
Elsewhere
- 案内される途中、仕切りの隙間に、ひとりで膳に向かう男の人が見えた。 № 001 — 楓の記録 楓について →
- 縁側に男が一人いた。 № 002 — 悠真の記録 悠真について →
- 奥の席に、男がひとりいた。 № 003 — 志乃の記録 志乃について →
- 胸ポケットに手帳を差した、私と同じ年頃の男の人だった。 № 005 — 美咲の記録 美咲について →
- その欅の下に、男がひとり立っていた。 № 006 — 蓮の記録 蓮について →
- 離れた席で、若い男の人がひとりで食事をしていた。 № 008 — 修一の記録 修一について →
- 向かいの席に、男が一人座っていた。 № 009 — 大輔の記録 大輔について →
- 湯から上がって、廊下を戻る途中で、階段の踊り場に男がひとりいた。 № 011 — 楓の記録 楓について →
- 少し離れたところに、男がひとりいた。 № 012 — 悠真の記録 悠真について →
- 金沢駅のホームで新幹線を待つあいだ、少し離れて男がひとり、黒い手帳に何か書いていた。 № 013 — 志乃の記録 志乃について →
- 少し離れたところで、男がひとり、同じ車を待つように立っていた。 № 015 — 美咲の記録 美咲について →
- 脱衣所に、私のほかにひとり、身支度をしている男がいた。 № 018 — 修一の記録 修一について →
- 窓側の男で、膝の上の黒い手帳に、何か書いている。 № 019 — 大輔の記録 大輔について →
- 庭に、宿の客らしい男がひとり出ていた。 № 021 — 有希の記録 有希について →
- 廊下に出ると、食事処のほうから、宿の者ではない男が一人、先に部屋へ戻っていくところだった。 № 022 — 楓の記録 楓について →
- 廊下の奥から、宿の者ではない男がひとり歩いてきた。 № 025 — 克彦の記録 克彦について →
- 少し離れた席に、ひとりで食べている男がいた。 № 026 — 美咲の記録 美咲について →
- 離れた席に、ひとりで食べている男がいた。 № 027 — 蓮の記録 蓮について →
- 料理茶屋のもう一方の隅に、ひとりで食べている男がいた。 № 029 — 修一の記録 修一について →
- 改札の脇のベンチで、男がひとり、黒い手帳に何か書いていた。 № 032 — 有希の記録 有希について →