東京から約2時間以内の、静かな宿
静けさは、遠さの対価ではない。東京から新幹線や特急で最短2時間圏、思い立った週末にそのまま向かえる距離に、根拠のある静けさを持つ宿がある。語り手たちがここを選んだのは、遠くへ逃げるためではなく、近くにも本物の余白があると知っていたからだ。気になる誰かの話から読んでみてほしい。
条件に合う宿が見つからない。絞り込みを変えてみてほしい。
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楓 — 元雑誌編集者 乗り換えの数だけ、遠くへ行ける気がした。
締切と締切のあいだの平日に、箱根の山上へ。三度向きを変える登山電車で強羅花扇まで——ある校正者の一泊
強羅花扇
神奈川県箱根町 / 高価格帯 / 東京駅から東海道新幹線で小田原駅へ約35分、箱根登山鉄道で箱根湯本へ約15分、箱根登山電車で強羅へ約40分、箱根登山ケーブルカーで早雲山へ約10分。駅そばから宿専用エレベーターが直結。強羅駅周辺から無料送迎あり(15:00〜18:00・現地連絡)
向いている客室の露天風呂で滞在を完結させたい人 / 部屋数の少ない宿を選びたい人
№ 001 — 新緑に、赤字は入れない -
悠真 — IT企業勤務・推し活に生きる会社員 来週の土日だけ、白かった。
ツアーのない週末がひとつ空いた。埋めるために取った修善寺・新井旅館で、通知の間隔がひらいていく——桂川の音だけが残る一泊
文化財の宿 新井旅館
静岡県伊豆市 / 中〜高価格帯(1泊2食 2名約55,800円〜) / 東京駅から新幹線で三島約50分→伊豆箱根鉄道駿豆線約33分で終点修善寺駅→バス約10分。特急踊り子なら直通約2時間8分
向いている登録有形文化財の建物に実際に泊まりたい人 / 源泉かけ流しの浴場(大浴場2・露天2・貸切2、24時間入浴)を重視する人
№ 002 — 供給のない週末の現場 -
志乃 — フリーランスデザイナー ノドの余白を広めに取ってある。詩は、白で読む。
断ってから、乗った。入梅前の軽井沢、木立の中の万平ホテルへ
万平ホテル
長野県軽井沢町 / 中〜高価格帯(2名1泊 約5〜6.5万円〜) / 東京駅から北陸新幹線あさまで軽井沢駅約1時間10〜20分、駅からタクシー約5分(約2km)。予約制無料送迎バスあり。徒歩約30分
向いているクラシックホテルの建築・調度を目的に滞在する人 / 駅や商店街から離れた木立の中で過ごしたい人
№ 003 — 憶えていられる分だけ -
美咲 — 介護と仕事を両立する会社員 油性ペンのインクが布に滲んで、母の名前が少し太る。
母を預けて、一泊だけ。乗換なし95分、雨の湯河原「石葉」の部屋食の宿へ
石葉
神奈川県湯河原町 / 高価格帯(2名1泊2食 約14.4万円〜) / 東京駅からJR東海道線直通約95分で湯河原駅(または新幹線で小田原乗換)、駅からタクシー約10分
向いている部屋食で滞在中に他客とほぼ会わずに過ごしたい人 / 全8室の小規模宿で静かに一泊二日を過ごしたい人
№ 005 — 軽い鞄が、いちばん重い -
蓮 — 作家志望 千二百年の湯に、佳作の三万円で入りに来た。
賞金三万円の使い途を三日考えて、新宿から特急あずさに乗った。笹子トンネルの先、雨の甲府盆地——松本清張が『波の塔』を書いた宿、湯村温泉 常磐ホテル
信玄の湯 湯村温泉 常磐ホテル
山梨県甲府市 / 中〜高価格帯(1泊2食・2名約52,000円〜) / 新宿駅から特急あずさ約1時間30分で甲府駅→南口からバス約15分「湯村温泉入口」下車徒歩約1分、タクシー約10〜12分
向いている文人の定宿の系譜(井伏鱒二・松本清張・山口瞳)に関心がある人 / 庭園に面した離れ・源泉かけ流し露天風呂付きの部屋で過ごしたい人
№ 006 — 一行書けたら、湯に入る -
修一 — 定年後に一人旅を始めた元会社員 朝とはこんなに長いものだったのかと、五年経ったいまでも思う。
万年筆のインクを替えて、浅草から日光へ。明治六年創業の金谷ホテルで、一日ぶんだけ書いて閉じる。
日光金谷ホテル
栃木県日光市 / 中価格帯(最安は室料のみ1名約15,500円〜。夕朝食付きは上位) / 浅草駅から東武特急で東武日光駅約2時間、駅から路線バス約5分「神橋」下車徒歩3分。無料シャトルバスあり
向いている明治期からの木造クラシックホテル建築・登録有形文化財の空間に滞在したい人 / 伝統様式のフランス料理のコースディナーを目的にする人
№ 008 — 一日ぶんだけ書いて、閉じる -
大輔 — 元スタートアップ経営者 六年と四ヶ月かけた会社の値段が、画面の上では一行だった。
会社を売った週、532日止まっていた赤い橋を渡った——別所温泉・旅館花屋
旅館花屋
長野県上田市 / 中価格帯(1泊2食 約38,000円〜) / 東京駅から北陸新幹線で上田駅約1時間15〜40分→上田電鉄別所線約30分→終点・別所温泉駅→徒歩5分(送迎なし)
向いている登録有形文化財の木造建築・大正期の旅館建築に泊まりたい人 / 新幹線+ローカル線+徒歩だけで到達したい人(車不要)
№ 009 — 五百三十二日の橋を渡る -
有希 — 会社員 六つのうちのひとつにいて、残りの五つを知らないままでいられる。
母の四十九日が済んだ秋に、伊豆高原へ。六棟しかない離れの宿で、何も片付けずに過ごした一泊
はなれ宿 善積
静岡県伊東市 / 中〜高価格帯(2名税込 素泊48,240円〜、夕朝食付55,440円〜) / 伊豆高原駅からタクシーで約8分。送迎の記載なし
向いている全6室・全室離れの構成で、他の客と動線が交わらない滞在を求める人 / 食事を部屋で取りたい人
№ 032 — 六つのうちの、ひとつ -
黒瀬慧 — 編者 詩人が小説家になる六年間が、教師の職とともにあった。
詩人が小説家になる六年間が、この土地にあった。小諸義塾の教師・島崎藤村と、中棚温泉の宿
島崎藤村ゆかりの宿 中棚荘
長野県小諸市 / 中価格帯(2名税込 素泊21,120円〜36,960円、夕朝食付44,000円〜48,480円) / 小諸駅から徒歩20〜30分、タクシー約1,000円。送迎の記載なし
向いている藤村が六年を過ごした小諸という土地を訪ねたい人 / 明治31年創業の宿に泊まりたい人
厳選録 — 六年、教師をしていた