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登録するということ
登録有形文化財は、平成八年に始まった制度である。
築五十年以上で、歴史的な価値があると認められた建造物を、国が登録する。指定ではなく、登録という。
指定文化財が現状変更を強く制限するのに対し、登録有形文化財は、改修しながら使い続けられる。外観を大きく損なわなければ、内部に手を入れて営業を続けてよい。
だから、泊まれる。
登録有形文化財は、使いながら遺す制度である。だから、泊まれる。
The-Yohakuで記録した宿のうち、建物が登録有形文化財であるものを、事実とともに束ねる。
明治・大正の木造
日光金谷ホテル(栃木)は、明治六年開業のクラシックホテル。 → 一日ぶんだけ書いて、閉じる
会津東山温泉 向瀧(福島)。 → お顔で覚えております
旅館花屋(長野・別所温泉)は、入母屋造の本館ほぼ全館が登録有形文化財。 → 五百三十二日の橋を渡る
下呂温泉 湯之島館(岐阜)は、昭和六年築の木造三階建て。玄関棟・渡り廊下とともに二〇一〇年に登録。 → 供給のない建物
時音の宿 湯主一條(宮城)は、大正期の木造本館が登録有形文化財で、個室料亭として使われている。 → 三日前までに、お申しつけください
文豪・文人とともに
文化財の宿 新井旅館(静岡・修善寺)。 → 供給のない週末の現場
城崎温泉 三木屋(兵庫)は、志賀直哉が『城の崎にて』の素材を得た宿。 → 遠いほうの切符を買う / 『城の崎にて』の三週間
法師温泉 長寿館(群馬)は、本館・法師乃湯・別館の三棟が登録有形文化財。 → 一首の歌が残る、山の湯
足元湧出とも重なる
名泉鍵湯 奥津荘(岡山)は、本館が登録有形文化財で、かつ足元湧出の湯を持つ。 → 測れない湧き方
積善館 佳松亭・山荘(群馬・四万)は、桃山様式を用いた山荘が国の登録文化財。元禄七年から続く。 → 三百年、途切れずに
木は、手が入る
木造の建物は、放っておくと傷む。人が住まないと、より早く傷む。
登録有形文化財の宿が今日も建っているのは、誰かが毎年、手を入れてきたからである。
床の艶は、拭き方ではなく、拭いた年月で出る。
その年月を、泊まる一晩のあいだ、借りることになる。
