宿と小説の読みもの、余白
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離れのある宿だから、指定しなくても離れに泊まれる、と思っていた。

その思い込みの正体から入ります。離れを、部屋の等級だと思っている人が多くいます。広い部屋、高い部屋、値段の高い順に並べ替えるといちばん上に出てくる部屋。予約の画面では、たしかにそう並んでいます。

離れは、等級ではありません。建物の位置です。

離れが何室あるか、書かれている

総室数と離れの室数が、どちらも数字で出ています。枠の少なさが、予約の前に分かります。秘境 白川源泉 山荘 竹ふえは約5,000坪の敷地に全12室が点在し、そのうち8室が露天風呂付離れ和室、残る4室が本館和室で、食事は全客室に据えられた囲炉裏で供されます。

本館の部屋は廊下に面していて、離れは面していません。同じ屋号の下に、廊下のある夜と、廊下のない夜が並んでいます。値段の差ではなく、そこが違います。

そして離れは、宿の一部でしかありません。十七室のうち十一室。五十室に対して、約三千坪の庭に点在する七棟十一室。部屋タイプを選ばずに予約すれば通されるのは本館の部屋のほうで、宿は嘘をついていません。離れはあります。数が限られているだけです。

離れを指定して取ると、着いてからの一晩の動線が決まります。決まるのは、廊下を歩く回数と、膳を運ぶ人が通る道と、湯へ行くのに屋根の下を通るのか、履物を突っかけて庭の砂利へ出るのかです。価格帯を上げても離れになるとは限りませんし、評点にはこの差が出ません。決めているのは部屋タイプの名前だけです。

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分けたのは、離れについて予約ページにどこまで書いてあるかです。

離れの棟に、名前が付いている

室数は出ていません。棟に名前があるので、その名前で指定できます。神話が息づく出雲ノ国 古代ロマンの宿 松園の離れは「宇夜都弁」、湯山荘 阿讃琴南の独立棟は「里山ヒュッテ」、ランプの宿 青荷温泉のはなれはふるさと館・幻渓楼・十方堂の三棟です。

離れがある、とだけ書かれている

離れの客室があることは分かります。何室かは書かれていません。皆美館には温泉付き離れ和室があり、湯之元温泉は和室10室と和洋室1室の全11室のうちに離れの客室があります。

向かないとき

離れは、指定しないと泊まれません。八軒とも本館の部屋を持っていて、予約の画面に出るのは宿の名前ではなく部屋の名前であり、そこに「離れ」「別棟」「〇〇亭」といった名が付いています。皆美館と湯之元温泉は離れの室数が書かれておらず、離れの客室がある、というところまでしか分かりません。

信玄の湯 湯村温泉 常磐ホテルでは、離れを取るかどうかで湯が変わります。大浴場は加温で、源泉かけ流しなのは離れと露天風呂付客室のほうなので、本館の部屋を取った夜は、かけ流しの湯には入らないことになります。同じ屋号の下で、同じ日に、湯の条件が部屋の名前で分かれています。

ランプの宿 青荷温泉は、総客室数が案内する先によって違います。一休.comは31室、じゃらんnetは35室で、はなれ3棟のうち何室が離れかは確認できていません。夜の灯りが宿の手入れするランプだけであることも、客室にトイレとテレビとコンセントが無く、携帯の電波も届かないことも、離れを取ったところで変わりません。

棟が分かれているぶん、食事処や大浴場までは歩きます。湯山荘 阿讃琴南の「里山ヒュッテ」は山の斜面を使った独立棟で、フロントから客室までの通路は屋外の坂道であり、膳に呼ばれるたび、湯へ行くたびに、その坂を下りて、帰りは同じだけ上がってきます。静けさと引き換えに、歩きます。

料金も部屋の構成も変わります。ここに並ぶのは掲載ページと調査記録に書かれていたもので、現地で違っていることはあります。

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指定の要らない宿もあります。全室が離れの宿を見るならどの部屋を取っても、離れになる宿、棟の造りのほうから選ぶなら棟の造りから、選ぶ宿があります。

一時間、遅く着く

神話が息づく出雲ノ国 古代ロマンの宿 松園は、チェックインの時刻が本館と離れで違います。本館は15:00から19:00、離れは16:00から19:00です。チェックアウトも、部屋タイプによって11:00と10:00に分かれます。

同じ日に、同じ宿へ向かって、着いていい時刻が一時間ずれます。

部屋の名前を選ぶのは、予約の画面で数秒のことです。その数秒は滞在の時間には数えられませんが、湯へ行くのに廊下の板を踏むのか、履物を突っかけて外の砂利を踏むのかは、そこで決まっています。

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