宿と小説の読みもの、余白
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8軒とも、ナイトウェアを置いていない。

八軒、という数が揃っているところから見ます。旅館に着くと、まず浴衣に着替えます。湯へ行き、戻って、夕食を食べます。寝るときに、もう一度着替えます。

二回目の着替えが起きるのは、浴衣を館内着として扱っているからです。昼の服と夜の服を分ける習慣が宿の中にもそのまま持ち込まれていて、廊下を歩くための服と、布団に入るための服が、別のものとして数えられています。

八軒では、その二回目が客の側に来ます。

浴衣のまま眠ってもいいし、寝間着を持って行ってもいい。決めるのは、着いてからでかまいません。

浴衣は、八軒とも置いてある

寝間着として使えるかどうかは、着てから決めることになります。丈と、袖と、寝返りを打ったときに襟がどこまで開くかです。

決める時刻は、最後に湯から上がった時刻です。

好きな時刻に湯へ入れると考えている読者には、この八軒のうち何軒かは向きません。積善館の湯は5時から25時までで1時から5時が夜間清掃に入り、和の宿 ホテル祖谷温泉は冬季に露天と貸切が19時で終わり、大正屋 椎葉山荘の山の湯は11時半から12時半が休止です。

湯の形も宿ごとに違います。陶泉 御所坊の大浴場は半混浴で貸切風呂は17時から22時、忘れの里 雅叙苑は12時から15時のみ男女別で、それ以降は貸切になります。

湯から上がる時刻が決まると、そのあと何を着るかを決める時刻も決まります。

この軸で選ぶと、寝間着を鞄に入れるかどうかを、家で決めることになります。地域でも価格でも評点でも、寝るときに何を着るかは決まりません。浴衣は置いてあってナイトウェアは無い、と分かっていれば、荷物の判断は入れるか入れないかの一択まで絞れて、宿へ着いてから決めることが一つ減ります。

八軒は分けませんでした。浴衣が置いてあるという一点で揃っていて、そこから先は、袖を通し、襟を合わせ、帯を締めて畳に座ってみないと分からないからです。

鞄に、一枚足すかどうか

浴衣のまま眠るのが落ち着かない人は、荷物が一つ増えます。薄手のものが一枚あれば足りて、鞄の隅に畳んで入る厚みです。

この八軒とは別に、浴衣そのものを館内着として置いていない宿もあります。海の旅亭 おきなわ名嘉真荘、きのえ温泉 ホテル清風館、湯山荘 阿讃琴南がそれにあたり、そちらへ泊まる夜は、湯から上がって最初に袖を通すものから鞄に入れることになります。寝間着を一枚足すのと、着るものを一式持って行くのとでは、鞄の重さが違います。

八軒のなかでも、足すものは一枚とはかぎりません。登録有形文化財の宿 名泉鍵湯 奥津荘ではシャンプーと石けんとスリッパも持参になり、積善館では髭剃りがそこに加わるので、家の洗面所の棚から何を抜くかは、宿ごとに組み替えることになります。

湯の扱いも揃っていません。旅館 國崎は加温と加水をしていると明記し、大丸別荘の湯は露天ではなく、案内には源泉かけ流しを基本としつつ一部にろ過と加温循環を併用していると書いてあります。

料金も備えも変わります。ここに並ぶのは掲載ページに書かれていたもので、現地で違っていることはあります。

着替えの一回を省くのと、持ち物を足すのは裏表です。洗い場に何を持って行くかなら石けんを、持って行く宿、乾かす道具のほうなら髪が乾くまでを、待つ宿があります。

朝、着ているもの

浴衣で眠った夜は、朝起きたときに、昨夜と同じものを着ています。

着替えた回数は数えられます。一回か、二回かです。

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数えられないのは、その一回を省いた夜が、ふだんの夜とどれだけ違ったかです。襟は寝ているあいだにねじれ、帯は腰の横までずれていて、それを直してから膳に向かうか、ずれたまま向かうかは、どこにも記録されません。

違いは、宿を出てしばらくしてから分かることがあります。

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