宿と小説の読みもの、余白
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冷たすぎて、そのままでは入れない湧き水がある。

温泉のページを開くと、かけ流しの欄をまず見る癖がついています。丸か、バツか。その一文字で、湯の順位を決めています。

順序は、逆です。湧いた温度のほうから先に見ます。

湯の使い方を先に決めているのは宿ではなく、湧いた湯の温度と量です。そのまま浸かれる温度で必要な量が湧く土地なら足すものは要りませんが、温度が届かなければ沸かし、熱すぎれば薄め、量が足りなければ循環させることになります。

八軒は、届かなかったと書いている宿です。書いていない宿を、推測でここに入れてはいません。

言葉を、四つに分ける

源泉かけ流しは、湧いた湯を注ぎ、あふれた分を捨てます。循環させず、消毒剤を加えないか最小限にします。湧出量と湯温がそのまま使える場合にしか成立しません。

加水は、源泉の温度が高すぎるときに水を足すこと。加温は、低すぎるときに熱を足すことです。冷鉱泉(二十五度未満)は、加温しなければ湯として使えません。

循環は、同じ湯をろ過して繰り返し使うことです。衛生管理と湯量の節約のために行います。

湧いた時点で、温度が足りない

冷鉱泉と書かれている二軒です。湧いてはいますが、そのまま浸かれる温度ではありません。

土地の側の事情、と書きました。きのえ温泉 ホテル清風館は瀬戸内の島にあり、竹原港からフェリーで約25分、垂水港から送迎車で約16分かかる場所で、湯が何度で湧くかも、その場所の一部です。

宿が選んだ温度ではありません。

この軸で選ぶと、かけ流しの欄だけを見ていたときに落ちていた宿が見えます。冷鉱泉の土地は、その欄で最初から外れています。加温か加水かまで読めば、同じ宿でも湯船ごとに扱いが違うことが予約の前に分かり、大浴場の湯と客室の湯を同じものとして数えずに済みます。

八軒を、湧いた時点で何が足りなかったかで分けました。

温度か量を、整えている

湧いた湯が熱すぎるか、量が足りないかで、加温か加水をしている六軒です。

同じ宿の中でも、湯船ごとに扱いが違います。強羅花扇は大浴場が加温加水の循環濾過で客室の露天は加水であり、山荘 天の里は温泉として入れるのが貸切風呂だけで、客室の半露天は温泉ではないと予約ページにあります。

一つの宿を一つの言葉でまとめられないのは、湯船ごとに条件が違うからです。

大和屋別荘には温泉の内風呂が付く客室と、露天風呂が付く客室があります。加温をしていて、源泉かけ流しかどうかは記載がありません。

源泉100%と、かけ流しは別のことである

源泉100%と書いてある宿でも、加温と加水はします。

花巻温泉 佳松園の案内には源泉100%とあり、その同じ案内のなかに加温と加水とあって、季さら別邸 刻も源泉100%でありながら、源泉が冷鉱泉のため加温しています。かけ流しの欄は、どちらも×です。

源泉100%と、加温加水と、かけ流しは、それぞれ別の欄に立っています。どれか一つに丸が付いたところで、残りの二つがどうなるかはそこから読めません。

源泉100%だからかけ流しだ、とは読めません。

読み違えたまま行くと、湯に入ってから気づくことになります。かけ流しの湯だと思って肩まで沈めた一晩と、沸かした湯だと知って肩まで沈めた一晩とでは、湯の温度が同じでも、上がったあとに残るものが違います。

かけ流しを目的に来た人には、この八軒は向きません。そこは曖昧にしません。

料金も湯の扱いも変わります。ここに並ぶのは掲載ページに書かれていたもので、現地で違っていることはあります。

湯の手間は、入り方でも分かれます。館内の湯を一つに絞るなら内湯で足りる宿、時間で借り切るなら湯を、借り切って使う宿があります。

沸かした湯が、どう違うか

沸かす理由は、土地の側にあります。その土地の源泉が何度で湧くかは、宿が決めたことではありません。

温度は測れます。加温したかどうかも、加水したかどうかも、欄に書いてあります。

書いていないのは、そこから先です。肩まで沈めたときに湯が身体を押し返してくる重さも、首の後ろの筋がいつ緩むかも、上がったあとに畳の上でしばらく動けなくなるかどうかも、欄には入りません。

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湯気は上がって、天井のどこかで水に戻ります。沸かした湯と、そのまま湧いた湯を肌が見分けるかどうかは、入った人しか知りません。

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