宿と小説の読みもの、余白
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連絡の来ない一晩になる。

そういう晩の順序を、湯上がりから見ていきます。湯から上がって髪を乾かすのは、次のことへ移るための手続きです。十分で終わり、終わる時刻が先に読めているから手続きでいられるのであって、読めなくなった時点で、それは予定の中に場所を持ちはじめます。

終わらないと分かった時点で、順序が変わります。

乾くまでの時間は、短くする対象ではなくなります。湯上がりと就寝のあいだに、名前のない時間が挟まります。何をするかは決まっていません。窓を開けるか、膳を待つか、座っているかです。

持って行けば、足りる

鞄に一つ入れれば済む七軒です。どれも洗うものを置いていないので、そちらもあわせて先に決めることになります。

決める場所は、家です。

湯に入れる時刻は、宿ごとに決まっています。高志の宿 高島屋は5時から24時、下呂温泉 湯之島館は1時から5時が清掃で入れず、旅館花屋の大浴場は男女で時間が入れ替わります。

最後に湯から上がる時刻を決めると、乾くまでの時間がどこに来るかも決まります。

この軸で選ぶと、湯上がりから就寝までの時間の長さが、予約の時点で決まります。料金にも評点にも、髪が乾くまでに何分かかるかは書かれていません。ドライヤーの欄が×の宿を選ぶということは、その夜に三十分か一時間の、予定の入っていない時間を持つと決めることです。

八軒を、持って行けば足りるかどうかで分けました。置かない理由では分けていません。宿がそれを書いていないからです。

持って行っても、使えない

充電器を持参すれば足りると考える読者には、ランプの宿 青荷温泉は向きません。客室にコンセントがなく、携帯電話も圏外です。夜の灯りはランプで、鞄の中身をいくら足しても届かないところがあります。

着く時刻も、こちらでは決めにくくなります。黒石駅前から送迎に接続する路線バスは14時20分と16時15分の2本だけで、そこから宿の送迎バスに乗り換えて、約20分かかります。

濡れたまま、部屋へ戻る

髪の長い人は、乾くまでがそのぶん長くなります。冬に行く人も同じです。

ランプの宿 青荷温泉は本館と3棟の離れに分かれているので、湯から部屋まで戻る道の長さは、どの棟の部屋を取ったかで変わってきます。外を歩くあいだに襟足の濡れがどこまで冷えるかも、部屋に戻って畳に座ったときに髪がまだ首に貼りついているかどうかも、そこで決まってきます。

戻ったあと、もう一度部屋を出る用が残るかどうかも、部屋の側にあります。静響の宿 山水には客室にトイレの無い部屋があり、神話が息づく出雲ノ国 古代ロマンの宿 松園の湯は露天ではありません。濡れた頭のまま廊下へ出るか、部屋の中で乾くのを待つかは、宿を選んだ時点では決まらず、部屋タイプで決まります。

大浴場の洗面台に何が並んでいるかは、確認できていません。ここに書いたのは、客室に置いてあるものの話です。

料金も備えも変わります。ここに並ぶのは掲載ページに書かれていたもので、現地で違っていることはあります。

待つ時間は、ほかの場面にもあります。湯が沸くのを待つなら湯を沸かして使う宿、膳が来るのを待つなら膳を、部屋か個室で待つ宿があります。

乾いた時刻は、書かれない

宿の記録には、何時に着いて何時に湯へ入ったかが残ります。料金も、部屋数も、バスの本数も残ります。

髪が乾いた時刻は、どこにも残りません。

乾いたかどうかは、指を根元まで入れて、まだ冷たく湿っているところが残っていないかを確かめるほかになく、確かめた人だけがそれを知っています。

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数字にはなりません。窓の外は暗くなっています。

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