遠くまで来て、駅から歩ける宿
岩井屋は東京から約6時間かかりますが、岩美駅からは約10分です。長い道のりの疲れを、最後まで引きずらずに済みます。
6軒。一人の枠を最後に確かめたのは、2026年8月27日から9月22日のあいだです。
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遠くまで来ても、着いてから疲れなくていい宿がある。
話は、最後の十五分から始めます。遠い宿ほど、着いてからも遠い。そう思って、駅から先の足を先に心配します。バスは何時まであるか、タクシーはいるか、送迎は間に合うか。
六軒は、そうなりません。
駅から歩く
改札を出て、十五分以内に着きます。大丸別荘は二日市駅から約十分、三木屋は城崎温泉駅から約十五分です。歩き出す時刻を、こちらで決められます。
鞄の重さは、この十五分のあいだだけ自分が持ちます。それは所要時間の欄には出てきません。
- 大丸別荘(二日市温泉大丸別荘) 福岡県筑紫野市(二日市温泉)
博多から在来線で16分下った二日市駅から約10分。
東京から約5時間 一人 三万円台半ば〜(1名1室・夕朝食付)
小説を読む PR一休.comで空室を見る(外部サイトが新しいタブで開きます)小説 第 52 話
後輩に渡すつもりの便箋が、まだ挟まったままの人がいる。— 千鶴(宿の仲居)『四十八度、毎分百リットル』
会津の温泉宿に勤めている。続けての休みが出た日に、よその宿へ客として泊まりに行く。
- 城崎温泉 三木屋 兵庫県豊岡市(城崎温泉)
京都から特急で二時間半。城崎温泉駅から約15分。一人での宿泊は受けていません。
東京から約5時間 一人 三万円台前半〜(2名1室の1名分・夕朝食付)
小説を読む小説 第 10 話
給湯室で子どもの写真を見せられた人が、ここへ来た。— 有希(会社員)『遠いほうの切符を買う』
子を持たない生き方を選んだ。母を見送って、実家の片付けが半分残っていて、急ぐ理由がないので急いでいない。
1名では部屋が出なかった宿の公式サイトへ(宿の公式サイトが新しいタブで開きます)
東京から四時間以上かかるのに、最寄り駅を出てからは十五分で終わります。長いのは列車に乗っている時間のほうで、宿は駅の近くにあります。遠さのほとんどが、列車の側に載っています。
四時間か五時間、乗り物を替えながら少しずつ速度を落としてきて、最後に残るのが十五分です。大丸別荘なら博多から在来線で十六分下った二日市駅、三木屋なら京都から特急で二時間半揺られた先の城崎温泉駅で、改札を出れば、そこはもう宿のある町です。
この軸で選ぶと、着いた日の夕方が自分の手に残ります。列車が遅れても崩れるのは列車の側だけで、駅から先は歩けば届くので、何時に着くと宿に伝える必要も、迎えを待つ時間もありません。価格帯にも評点にも、この十五分が自分のものかどうかは出てきません。

分けたのは、駅を出てから歩くか、乗るかです。歩ける宿は着く時刻を自分で決められ、乗る宿はその手配が要ります。
駅から、十五分以内を乗る
路線バスか車で、駅から宿まで十五分以内です。岩井屋だけが路線バスで、岩美駅から約十分乗って降りれば徒歩一分、残る三軒は車になります。所要は短いですが、短い区間ほど手配が要ります。
- 岩井温泉 岩井屋 鳥取県岩美郡岩美町(岩井温泉)
岩美駅から。バスの本数が限られます。
東京から約6時間 一人 一万円台後半〜(1名1室・素泊まり)
小説を読む PRじゃらんnetで空室を見る(外部サイトが新しいタブで開きます)小説 第 11 話
自動化ツールが赤を一つも入れなかった原稿を、最後に見た人がいる。— 楓(元雑誌編集者)『通した一行の、遠さ』
いまはフリーの校正者。機械がかけた校正に追記を足す仕事を減らせないまま、単価がその半分に近い文芸のゲラも受けている。
- 小天狗さんろじ 山口県下関市(川棚温泉)
川棚温泉駅から。
東京から約5時間 一人 四万円台半ば〜(1名1室・夕朝食付)
小説を読む PRじゃらんnetで空室を見る(外部サイトが新しいタブで開きます)小説 第 50 話
検索窓が最初から「大人1名」だった、と書いた人がいる。— 大輔(元スタートアップ経営者)『既定値が、一人だった』
会社は人に渡した。睡眠も心拍もいまも測っていて、妻の親の介護は去年終わり、妻と二人、予定の入らない日が続いている。
- 大正屋 椎葉山荘 佐賀県嬉野市嬉野町(大字岩屋川内)
嬉野温泉駅から。タクシーは台数が少ない駅です。
東京から約5時間 一人 二万円台後半〜(2名1室の1名分・夕朝食付)
小説を読む小説 第 44 話
母が職員を「お姉さん」と呼んだ、という電話のあとに来た人がいる。— 美咲(介護と仕事を両立する会社員)『予定ではなく、名前で書く』
母が施設に入ってから、面会は週に一度、土曜の午後になった。面会と面会のあいだに空いた平日に、一泊だけ出る。
1名では部屋が出なかった宿の公式サイトへ(宿の公式サイトが新しいタブで開きます)
- 山荘 天の里 和歌山県伊都郡かつらぎ町(天野)
最寄り駅から公共交通の便が限られます。
東京から約4時間 一人 七万円台半ば〜(1名1室・夕朝食付)
小説を読む PRReluxで空室を見る(外部サイトが新しいタブで開きます) PRExpediaでも空室を見る(外部サイトが新しいタブで開きます)小説 第 53 話
十四語目を数えなかった人が、ここに泊まった。— 黒瀬慧(編者)『数えなかった、十四語目』
社員六人の会社で、決められない企業のために、決めるための根拠を作って売っている。旅館だけは、事業にしないと決めている。
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向かないとき
十五分と三十五分は、どちらも「駅から」の一語で書かれます。改札を出て十五分なら、鞄を持ち替えてそのまま歩き出せて、着いた日の夕方はまだ手元に残っています。三十五分なら、そこにもう一つ乗り物が挟まります。同じ一語のなかに、その夕方に何ができるかの差が入っています。
駅に近いことと、東京から近いことは関係がありません。岩井屋は東京から約六時間かかって岩美駅からは約十分で、その六時間のあいだに新幹線、特急スーパーはくと、山陰本線、バスと乗り物が四度替わります。小天狗さんろじも、小倉駅から下関駅へ十五分、下関駅から山陰本線で川棚温泉駅まで約四十分乗り継いだうえでの、タクシー約五分です。長いのは前半で、最後だけが短い。
その最後の短い区間が、いつでも拾えるとはかぎりません。岩井屋へ向かう岩美駅からのバスは本数が限られ、代わりとして書かれているのはタクシー約七分です。椎葉山荘は嬉野温泉駅のタクシーの台数が少なく、事前の電話配車が必要な場合があると宿が書いています。駅前に降りれば車がいる、という前提で組むと、ここで止まります。
山荘 天の里は最寄り駅からの公共交通の便が限られ、要事前予約の無料送迎かタクシーが事実上必須になり、その送迎は定員四名で、当日予約を受けていません。三木屋は徒歩十五分の道を自分で歩けますが、無料送迎バスのほうは十二時三十分から十八時着の特急に対応する分のみで、事前連絡が要ります。歩いて行けることと、車に乗れることは、別々に決まっています。
ここに並ぶのは各宿の記録に書かれていたもので、現地で変わっていることはあります。

駅からの距離は、軸を変えると逆から見えます。降りてからが長いほうを見るなら降りてからが、まだ長い宿、乗り継いで行くほうなら路線バスと船を、乗り継いでいく宿があります。
歩いて着くということ
四時間乗ってきて、最後に十五分歩く。
その十五分は、移動の残りであり、同時に到着の始まりでもあります。駅前の店の並びが途切れ、道の幅が狭くなり、靴底に当たるものが変わって、宿の玄関に着くころには、列車のなかで固まっていた背中がもう伸びています。
車で五分の宿には、この十五分がありません。早く着くほうが、たいていは楽です。
早いことと、切り替わることは、同じではありません。
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